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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Read 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) by 牧 逸馬 (まきいつま) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,305 characters · 498 screens
犯罪が最後に近づくに従って、ハアルマンは段々露見の懼れなど忘れたように大胆になって、殺した少年のポケットから出た小刀其の他の小物品を平気で市場で見せびらかしたり、友人に配けて与ったりしている。
大犯罪には、よく散在的な小さな緒が集まって自働的に発見の動機を作るように、このハアルマン事件もそうだった。
少年が頻ぴんと闇黒に呑まれて、流石腰の重い警察も何とか全線的に活動を起さなければならない事情に迫られている時、そして、何となくノイエストラッセの方面から異臭が漂って来るようで、ハアルマンの肉屋なる存在が真剣な意味で気になり出して来た矢先、一九二四年五月二十八日だったが、四、五人の子供達が、ラインの岸に近い浅瀬の泥の中で、少年の物と覚しき完態を備えている頭蓋骨を発見した。そして引続き不思議にも、翌二十九日、矢張り同じ場所から今度は三個同時に何れも少年らしい頭蓋骨が出て来た。それらは凡べて即時警察へ送られたのだが、すると、又また警察は、奇妙な程無関心な態度を採って、既に、例の肥っちょの肉屋スパイ、フリッツ・ハアルマンに関する充分疑わしい報告を受取って前提的な智識があるにも係らず、依然として泰然たるもので、それらの頭蓋骨は、医学生の悪戯か、或いは上流の他の町から流れて来た物であろうとあっさり無視して終った。