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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Read 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) by 牧 逸馬 (まきいつま) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,305 characters · 498 screens
ただ人がいないだけである。艙底に水が這入っていないことで、何処も漏っていないことが判るし、円帆も、ロウプも帆も、凡べて在る可き所にあって、帆船としての設備、備品等、完全でそして清潔である。帆桁索は一つ一つ正規の繋栓に留まっている許りか、何よりも不可解なのは、非常用の短艇が一隻も失くなっていないことだ。皆ちゃんと短艇台に納まっているのだ。これで、乗組員が船を見棄てたのでないことは確定的に判断されたが、それは一層不気味さの度を加えたに過ぎない。何時何処の物蔭から何が飛び出すか判らないと言うので、四人は、極度に緊張した神経で警戒し合いながら、跫音を忍ばせて船内を歩き廻った。何処かに船長以下乗組員の屍体が転がっていなければならない。炊事場の隅々から水槽の一つ一つまで丹念に覗いた。中央船艙の覆いが半分ほどめくり掛けた儘になっていたので、一同は、このハッチの下に屍骸が重なっているに相違ないと這入り込んでみたが、暗い中に、荷物が並んでいるだけだった。
見廻れば見廻るほど、謎は深まって、キャプテン・ボイスの一行は、得体の知れない大きな恐怖に直面していた。
若し船内が乱雑になっていたら、乗組員のいないことも説明がついたかも知れないが、度々言う通り、万事きちんと整頓していて、塵一つないように掃除の往届いた、何処を見ても手入れ