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せかいかいきじつわ「じょぶん」
世界怪奇実話
牧 逸馬
Read 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) by 牧 逸馬 (まきいつま) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,305 characters · 498 screens
幾ら斯かる人獣でも、当局としては、一応自分を弁護する機会をも与え、その上で法律に拠って適宜に裁断する義務のあることは、尠くとも文明国である以上言うまでもなかろう。ところが街頭の昂奮性野次馬が絶大の勢力を有つ米国辺りでは、この解り切った理窟を運行することが、実際になると仲なか至難な許りでなく、時として、護送中などに、群集に犯人を奪われて、あっと言う間に私刑にされて終うことも珍らしくない。また、場合によっては、野次馬の頭目から金を取って、警官が犯人を群衆へ売り渡したり、そうかと思うと、面倒臭い裁判よりも、手っ取り早くて好いと言うので、初めから私服の警官が群集に紛れ込んでいて采配を揮い、制服の警官とあっさり小競合いの後筋書き通り犯人――非道い時には未だ嫌疑者に止まっているのに――を奪取して、自分達が先頭に立ってさっさとリンチを済ましたり、この亜米利加名物の私刑の話しになると、傍道に外れて行って限りがないが、此のドロシイ事件の際のグリイン等フリント警察の態度は、当然と言えば当然だけれど、何時になくしっかりしていた。フリント市の場末、ラ・サアル街の路上に、壊れ掛ったダッジの箱型が行き悩んでいて、その傍に魔誤まごしていた男があった。