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ひかりあういのち

光り合ういのち

倉田 百三

Read 光り合ういのち (ひかりあういのち) by 倉田 百三 (くらたひゃくぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,439 characters · 263 screens

Aozora Bunko

彼の目ぶたや頬は桃色がかって、そして癖のある笑い方をした。

私は何か不安を感じて落ち付けなかった。

「これこの間撮ったんですけれど」

彼は写真を出して見せた。

ダーリヤの花をあしらって、私などに出来そうもない、ハイカラな、気のさすようなポーズをしていた。

「よくとれてるね」

「これあげましょう」

「うむ」

「あなたのも下さいな」

「今度あげるよ。僕のは蛮カラだけれど」

「一緒に写真とりません?」

そう言って首をかしげる様子は少女を思わせた。そしてどうしても純潔でない、或る不安なものがまつわるのであった。私は誘惑者というものを初めて知った。

「宮本さんがね、僕に手紙を下さるんですよ」

宮本というのは或る多額納税者の豪農の息子で、私より一級の上の秀才であった。

私は何か嫉妬に似たものを呼び起された。

「遊びに来いとおっしゃるけれど、僕行かないんです」

この少年は呉から来ていたが、東京の言葉を使った。父は造船所か何かに出ている、母親は芸者であったことが後で解った。

私は絶えず甘い、快いものを感じつづけた。それと共に不安を。私は憶病な自分を自覚した。尾道時代にはあんなに大胆に振る舞えたのに、何故だろう? 少年ではなくなりつつある自分を恐れた。