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よしだしょういん
吉田松陰
徳富 蘇峰
Read 吉田松陰 (よしだしょういん) by 徳富 蘇峰 (とくとみそほう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 135,622 characters · 269 screens
その乃祖元就が、正親町天皇の即位大礼の資を献じてより以来、恩賜の菊桐は、彼が伝家の記号となり、大膳太夫は、彼が伝来の通称となれり。彼は幕府を経由せずして、皇家と直接の関係を有したり。彼は京都に藩邸を置くの特許を得たり。彼は三条橋上を、白毛々たる長槍を荷い、儀衛堂々、横行濶歩して練り行くの特権を有したり。約言すれば理においては、水戸皇家と最も関係を有し、情においては、毛利皇家と最も関係を有す。松陰が毛利氏の世臣たることは、彼の生涯において、浅からぬ感化あるを疑うべからず。
長防の士気は如何。太平腐敗の空気は、何れの所にもこれなきはなし。試みに元禄時代に開版したる『人国記』を見るに、長門の人情風俗を記して曰く、
当国の風俗は万事に差掛たる事なく、人の音声も下音に上調子なることなし。人に応ずるにも一思案して答える風なり。互に人だのみにして遠慮過ぎたり。何を勤むといえども進む事疾けれどもそのまま怠惰の気発す。これにより武士の風俗善といい難しとぞ。
惟うに彼の君辱められ臣死するの一時に際し、靦然として幕府に恭順を唱え、志士を馘りて幕軍の轅門に致したる、俗論党の故郷として、充分の価値ありというべし。