Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Read 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,024 characters · 28 screens
「見ない、金輪際見ない」
「嬉しい、清作さん、――私は死んでも本望」
「いや死んではならぬ」
二人は犇と手を取り合って居りました。
「清竹さん――いえいえ、あなたはそんな名前じゃない、本当のお名前を聞かして下さい」
「――――」
「お願いだから、――私はもう長い命はない、こうしているのさえ、精一杯ですもの、何時死ぬかわからない、――あの世とやらへ行って、二世を契った殿御の本当の名前も知らなくては心細い」
「それはな、お通」
「教えて下さい、――そっと」
「――――」
「あ、もう、眼が見えなくなりかけている」
「――――」
「耳も」
お通は泣くのです、清作の膝に、手負の半身を載せて――。
「よし、教えてやろう、よく聴けよ」
「嬉しい」
「宜いか」
今は頼み少くなった聴覚の最後に、清作は自分の本名を、一生懸命に吹き込むのでした。
「――公儀直参――一宮――隼人様」
「シッ」
「いちのみや――はやとさま」
「お通」
「あい」
二人の涙は何も彼も解き尽すのです。犇々と握った手から手へ通う真心、ほんの一日の情愛でしたが、それは焼き付くような真実と、命を賭けての宿命だったのです。
怨讐二つの飛行具