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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,487 characters · 19 screens
「死骸が自分の足の下へ踏台を持って来るかね、馬鹿な話だ」
相変らずズケズケ物を言うのは下男の宇太松でした。
「お前の口を出す場所じゃない、黙って引込んでいろ」
「ヘエ」
主人に叱り飛ばされて、スゴスゴと自分の住んでいる物置に引下る宇太松を、皆んなは軽蔑し切った眼で見送って居ります。
金と顔に物を言わせて、検死は無事に済みました。金助は雇人の身分を忘れて、放蕩に身を持ち崩し、店の金を大分費い込んで、縊死を遂げたということになってしまったのです。
併し、お竹を繞って緊迫して行く空気は、それっきり納まるべくもありません。
その頃、通旗籠町に、御旅所を設けて、武州比企郡の修験者の玄沢坊というのが居りました。袈裟、兜巾姿に、一本歯の足駄をはき、釈杖を突き鳴らし、法螺の貝を吹きながら、町々を勧進して歩き、御旅所では信者を集めて祈祷などをして居りましたが、思いの外の信心を集めて、その頃神田日本橋一円の人気者になって居りました。
もう四十七八にもなるでしょうか。眼の大きい、鼻の高い、頭髪の虎鬚で、何様容易ならぬ人相が江戸ッ児の好奇心を捉えたのでしょう。野球の応援団長と同じことで、修験者などもその人相が大きな役割を持つことは争われません。