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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,487 characters · 19 screens
何よりの證據は、あの死骸の悪相だ、般若の面そっくりだというぜ」
こんな噂を聴く度毎に、美しい下女のお竹は、店中からも世間からも、妙な眼で見られるようになって行ったのです。
佐久間の店の中の、眼に見えない旋風は、それを切っかけに、又一段の激しさを加えました。手代の金助と与三郎、伜の伊太郎、それに主人の勘解由までが、四つ巴になってお竹の後を――朝から晩まで、焼き付くような眼で追い廻したのです。
第二の事件は、一と月経たないうちに起りました。
今度はお竹に一番熱心だった手代の金助が、お勝手の天井に、天窓の紐でブラ下っていたのです。
引おろして見ると、最早息も絶え、氷のように冷たくなって居りますが、懐中にお竹にあてて書いた、艶しい恋文を十六本も持っていたのは、立会いの衆を驚かせました。
「首をつったのなら、踏台があるはずだ――隣の部屋から持ってきて、死骸のブラ下っていた下のあたりに引っくり返しておくのだ」
主人は妙なところに、気が廻ります。内儀のお杉は自害ということにして、大分金をバラ撒いて葬りましたが、踏台の無い首つりを検死に見とがめられては、今度は佐久間の暖簾に関らずには済みそうもありません。