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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
Read 妾の半生涯 (わらわのはんせいがい) by 福田 英子 (ふくだひでこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 64,051 characters · 122 screens
しかど、富豪の家に人となりし彼の、別に苦情を訴うることもなく、むしろ清貧に安んじたりし有様は、妾をして、坐ろ気の毒の感に堪えざらしめき。妾はこれに引き換えて、素より貧窶に馴れたる身なり、そのかつて得んと望める相愛の情を得てよりは、むしろ心の富を覚えつつ、あわれ世に時めける権門の令夫人よ、御身が偽善的儀式の愛に欺かれて、終生浮ぶ瀬のなき凌辱を蒙りながら、なお儒教的教訓の圧制に余儀なくせられて、窃かに愛の欠乏に泣きつつあるは、妾の境遇に比して、その幸不幸如何なりやなど、少なからぬ快感を楽しむなりき。妾は愛に貴賤の別なきを知る、智愚の分別なきを知る。さればその夫にして他に愛を分ち我を恥かしむる行為あらば、我は男子が姦婦に対するの処置を以てまた姦夫に臨まんことを望むものなり。東洋の女子特に独立自営の力なき婦人に取りて、この主義は余り極端なるが如くなれども、そもそも女子はその愛を一方にのみ直進せしむべき者、男子は時と場合とによりて、いわゆる都合によりてその愛を四方八方に立ち寄らしむるを得る者といわば、誰かその片手落ちなるに驚かざらんや。人道を重んずる人にして、なおこの不公平なる所置を怪しまず、衆口同音婦人を責むるの惨酷なる事、古来習慣のしからしむる所といわばいえ、二十世紀の今日、この悪風習の存在を許すべき余地なき