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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
先ず峠としては低く且至って楽な方である。従ってどっち側の道も平凡であるを免れないが、上州側は谷川連峰の素派らしい赭色の岩崖を仰ぎながら上下することを得るのがせめてもの心遣りであろう。頂上の展望も相当に広いであろうが、私が此処を通過した時はいつも霧か雨で、僅に雲霧の途切れ目から一ノ倉山の頂を垣間見たのみであった。
「●万太郎山・谷川岳・小出俣岳(三国山より)」のキャプション付きの写真
●万太郎山・谷川岳・小出俣岳(三国山より)
清水峠が通行されるようになったのは、可なり古い時代からであるらしいが記録の徴す可きものがない。その明確に文書の上にあらわれているのは天正以後のことである。『上杉記』に拠ると天正六年三月に上杉謙信が卒して、養子三郎景虎と甥喜平次景勝との間に家督争が起り、景虎の実家北条氏が応援の為に此峠を踰えて越後へ出兵した。
右ニ記如ク上野衆北条ト一味故、越後ヘ之通路自由ニテ、三郎殿ヘ加勢ノ兵北上野ヘハ志水谷ヘ下テハ長尾伊賀守城ヲ取巻ク。三国ヶ峠ヲ越テハ坂戸山樺沢城ヲ打囲テ攻ル。
樺沢ノ栗林肥前守、志水長尾伊賀、坂戸山城ヘ入ル故、越後ヘ直越ノ道自由ナル故、八月上州厩橋城主北条安芸守ノ子丹後守ニ(初ハ弥五郎ト云。