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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
南北アルプスの諸山を縦走する場合のような大袈裟な登山では、人夫の雇用其他の準備で多くの費用を要するが、秩父では殆んど人夫などの必要は無いというても好い位である。其上四月下旬から十二月迄の間なら、何時何処へでも自由に登山することが出来る。そして山の高さから言えば、二千米から二千六百米に及んでいる。雪の多い時が望みなら、四月中旬以後五月上旬迄に甲武信、金峰の連脈に登れば、十町や二十町の間四、五尺の雪を蹈むのは普通である。唐松や白樺の若葉が見たいと思えば、五月の梓山、川端下の戦場ヶ原がよい。紅葉は十月の梓山、川端下、黒平、金山。石楠花は殊に秩父奥山の名物である。瀑布は入川谷の支流荒川の権太瀑、真ノ沢に木賊瀑が懸っている。花崗岩の侵蝕谷には笛吹川の上流東沢、西沢の奇峡がある。花崗岩と古生層との侵蝕谷には入川谷、滝川谷がある。入川谷の幽邃と険怪、東沢、西沢の壮大と瑰美、共に秩父の沢の中では第一に位するものである。どう考えても奥秩父の山や谷は、都の山岳宗徒にとりては、殆ど天与とも言う可き巡礼の聖壇であり、活躍の舞台である。之に詣で之に上ることをせずして、空しく遠方から眺めているだけでは誠に勿体ない。