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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
然し今は峠ノ沢の製板業が盛になったので宿屋なども出来て、聊か面目を一新した形である。すべる赤土道を登って午後一時赤志に着く。此の赤土道の通っている山の鼻が赤ッパ尾根というのであろう。二軒しかない上手の方の家に寄り込んで米を出して昼食を炊いて貰った。笛吹川は此下で分れて西の方へ折れ曲っている。ドス黒い雲が重く垂れている渓の入口に素張らしい岩山が右から突き出しているのが目を惹く。爺さんに聞くと鶏冠山だと教えて呉れる。恐ろしい山だと思った。
二時二十分に此処を立って、少し行くと道は急に細くなり、登りも稍や激しくなる。唐松尾根というのは此辺であろう。針葉樹や闊葉樹の入り交った林の中を辿るので、漸く山の旅らしい感じが起る。燕オモトが多い。同じような道を二時間許り登ると、少しの間渓流に下って河身を辿るようになる。立派な小屋が河の中の岩の上に建ててあった。御用品中継所の看板がある所から推して、御料局で建てたものだろうと思う。
渓を横切ってから草原を七、八町も登ると左から谷川が落ちて来る。栂の大木や槭などが茂り合って、稍や深山の趣がある。谷を渡って又登りに懸ったが、考えると恐らくこれから上には水があるまいとの懸念から、引き返して川のほとりの廃屋の跡へ野宿する仕度の最中に下から二人上って来た。