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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
それを目あてに東南を指して進んだ。笹は短くなって歩きよくなるが、白檜や大白檜の若木が蔓り出した。其中を潜り抜けると忽ちあたりがパッと開けて、私達は鬼怒沼ヶ原の一端に跳り出た。そして足に任せて原の中を歩き廻った。
原は水苔の床らしく踏むとじめじめしている。東寄りの方には矮小な黒檜白檜の一叢が沙漠の沃地を見るが如くに碁布しているけれども、其他は茫々たる草原で、五、六寸から一尺あまりに延びた禾本科や莎草科の植物が吹き募る東南の風に靡いている。紅に染った葉の色も霜や雪に焼けて、少し黒ずんでいた。草間には小岩鏡の群落が花時の美観を偲ばせ、蔓苔桃の紅い実がこぼれ散った宝玉を思わせる。
原のほぼ中央と覚しきあたりに最大の池がある。水は深くはないが澄んでいる。其附近が原の最も窪い所で、其北に少し宛高くなって三つ許の池が連っている。南北に長く東西に狭い原は、又南北に低く中央が高い。其高い所は国境より少し南に当っているであろう。それで北の方にある二、三の池の水は、上州方面に流れて東岐沢に入ることになる。最大の池の東南にあたる一段高い所には、二、三十の小池が群集している。