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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
この駒ヶ岳なども夫が無いのは甚だ不都合である。笈の中は捺印帖と野宿の時の自炊道具で、米は何時でも一升を携帯していると話した。そこで其帖を拝見に及んだ。奉書だったか鳥の子だったか何でも立派な紙で、錦襴の表装が施してあり、一冊の厚さ二寸に近く、夫が十冊揃っている。開いて見ると寺は能く知らないが、山では恐山、岩木、鳥海、月山其他私の知らない奥羽の山から、北越関東の山名がずらりと並んで、大きな印が押してある。私は見ている中に嫉ましい程羨ましくなったのを覚えている。家にはこれと同じ物が三十冊もあると言われて、全く茫然としてしまった。笈の重量は九貫目あると言う。私は二貫目あるかなしの自分の両懸の荷物を眺めて、何となく恥かしいような気がしたのであった。尾張の春日井郡といえば、天明五年に御岳の黒沢口の登路を中興した覚明行者の生れ故郷で、御岳講の最も盛んな土地であるから、斯様な人が出るのも不思議ではないと首肯される。
斯くて途もなき巌角を踰え、物古りたる灌木の叉簇せる中を上り行くこと一里余にして、林茲に尽れば、雪かと見まがふばかりなる花崗岩もて、築き上げたらむが如き峻岳の※(「山/召」