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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
その松茸をお婆さんが濡れ紙に包んで、灰の中で蒸し焼にしてくれた。生粋の松茸を味わうには、こうするのが一番好い方法だそうである。まだ走りだから二円五十銭には売れると主人が話した、それを惜気もなくぽんと投げ出した元締も、さすがに太腹なところがあると感心した。
明くる朝つとめて駒ヶ岳へと出で立つ。あるじが教にまかせ、河原伝ひに辿り行くに、岩ばしる渓流白泡をたゝせて、飛沫衣に濺ぎ、暁嵐峰より吹き下して、山気いとゞ冷やかなり。斯くて上ると二里許にして、赤河原といへる処に到れば、勾配は漸く急となり、赭色の岩盤より成れる磊※たる河床は、層々相連りて乙字を重ねたる如く、迅流岩を噛み、水脈分れて五となり三となり、縦横に石壁を奔盪して、彼処には淵を湛へ、此処には瀑布を懸け、忽ち雪を飛ばし藍を沈め、※※として流れ行くさまの凄まじきに、両山愈迫り来りて巌益高く、老檜天を刺し、古松互に枝を交へ、谷深くして日光を洩らさねば、松蘿長く垂れ懸り、水烟模糊として、露の零つること滋く、巌華深く閉ざして、攀づるに道もなし。衣を搴げて流を渉り、崖樹の自ら僵れて略※となれるが上を渡りつゝも、行くこと十余町にして、渓流左右に分れ、右なるは花崗岩壁を摩して下り、石滑かに水駛し。