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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
尚お安十郎は奥仙丈岳の絶巓は甲州に属していることを話したが、当時朝日岳を奥仙丈と信じていたので、余り気にとめて聞かなかったのは残念であった。
二十五日。午前七時半白木屋の前で南日君と左右に別れた。南日君は八ヶ岳に登って上高地に行き、私は中津川から両神山に登って帰京しようというのである。別れる際に南日君から呉呉も血気の勇に逸って冒険してはいけないと誡められたので、すっかり子供に返って何だか悲しいような気がした。村はずれで十文字峠への道と分れ、左を取って三国峠に向う。白樺の木立に沿うたり稲田の畔りを歩いたりして、十五、六町行くと河原に出て千曲川を渡った。河原撫子、女郎花、鵯花、何やら升麻、車百合などの花が露重たげに頸垂れている。左手の草の斜面は高天原で、昔、盤古の神と建御名方神と戦場ヶ原で戦った時、諏訪明神の軍が屯していた所だと伝えられている。細い渓流について四、五度夫を横切りながら登って行くと草原に出て、間もなく大きな岩が現われる。出がけに白木屋の主人に書いて貰った略図の通り、此岩を左に見て右下に谷川の音を聞きながら少し登ると、緩い傾斜の原の中を道が通じている。