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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
夫でも長次郎は構わず真直ぐに下りて行った、金作と源次郎は左に搦んで少し茂った木立の間に身を隠した。私達三人は立ち竦んだまま声の懸るのを待っていた、暫くすると長次郎の姿が雪渓の上に顕れて、振り仰ぎさま「こっちゃだ、こっちゃだ」と呼ぶ声が聞える、思い切って其方に下りようとする途端に、左の方からも金作の声が聞えた、どっちが楽そうだと聞いて見る。ひどい処だと答えたのが長次郎で、此方は楽だぞと答えたのは金作である。最初私達が下りた窪が絶壁の下で雪渓をなしているのを見たが、今漸く其下手の横へ出られたのだ、然しこんな急な雪渓にはまだ出遇ったことがない、カンジキなしではとても下れぬ。三人が其処に腰を掛けて銘々に持って来たカンジキを金作に穿かして貰っていると、下から長次郎が鉈で足場を作りながら登って来た、「如何だい、ひどい所だなあ」と南日君がいう、「皆強いでまあまあ怪我がなくてよかった」と長次郎、金作は頻りに「折角旦那方を案内して来ながら劒へ行けなかったのは済まない」と気の毒がる、「何に構やしないさ、明日また確かり頼むよ」と南日君が慰め顔にいう。
覚束ない足どりで急な雪渓を三十間も下ると小窓裏の大雪渓に出た、最早十一時を少し過ぎている、劒へ登ることは諦めなければなるまい、荷物を一緒に持って来て居れば、此処から小窓を踰えて