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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
此外私達の不注意からして人夫の調和が欠けていた事も見逃せない。黒部のような処へ入るには、谷歩きに熟練した者の一人でも多い方が心強い。それで多年同行して其技倆を信頼している気心の知れた大山村の宇治長次郎と、他に山田竹次郎の二人を呼び寄せた。助七は同じ村の佐々木作松と佐々木清助という二人の若者を連れて来た。勿論知らぬ同志であるから多少気まずい点はあろうと考えていたが、斯く迄に排他的であろうとは全く予想しなかった。例えば食料品を持った若者の荷は、日毎に其量を減じて、果ては殆ど空身にも等しくなるが、天幕や毛布などでいつも重い長次郎等の荷を分担しようとはしない。私は見兼ねて或朝、どうだね少し分けて貰ってはと言うと、助七は気色ばんで言下に「お前等荷を分けた時に、どれを背負うかと聞いたら、それを背負ったのではないか、初からの約束だ」とはねつけたような次第であった。
案内者として頼みに思う助七であるから、黒部といえば自己の領域ともいう可き強味さえ加わって、我意に募ったとて止むを得ないにしても、目的達成という見地からすれば、可なり重大な関係のある事であるのに、夫に就ては何の顧慮も払われていないらしいことが分ったので、私の心は暗かった。