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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
其上に苗場山の長い頂上がふくらみを持ったたるみのない線を右上りに一文字に曳いている、ゴーンと撞き出された巨鐘の音波にもたとう可き其線の美しさは形容の言葉を知らない。真白な山体に黒く印された十数条の嶄岩の列は、東の絶壁が容易に近付き難きことを示している。苗場山の右には神楽ヶ峰、桐ノ塔、雁ヶ峰、高石山など右手に長い裾を曳いて重なり合い、左にはナラズ山が筍山の連脈の上に鈍い笠状の頭を擡げ、次で一段高く大黒山は恐ろしいまでに黒木が茂っている。東沢ノ頭から上信越三国の境にある白砂山までは、流石に高山相を呈して輪廓が荒く鋭い。白根山、浅間山さては秩父の奥山なども、よく晴れた日には望まれる。雪の中から黒い頭をぽつんと市女笠のように抜き出している稲包山から、尾根は脚の下の三国峠に連なっている。十月下旬ここから眺めた紅葉の大観は、また素晴らしいものであった。
四月上旬には温泉から峠まで三尺乃至六尺の雪であった。峠の東側は五尺余りの雪庇が発達し、それを打砕いて峠の上に立った。権現様のお宮も鳥居もまだ雪に埋もれて、上の方が少し露われているに過ぎない。三国山の南側の草原だけは地肌が出て居たけれども、頂上は一面の雪で何処でも自由に歩けた。