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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Read 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) by 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 284,014 characters · 565 screens
唯水量は中俣の方が余程多い。
釜沢の釜は入口から二、三十間を遡った所にある第一瀑の瀑壺から始まるのであるが、此沢は釜より寧ろ滝の方が多いから、たる沢とか滝の沢とか名付ける方が至当であるらしい。然し最初の瀑壺は大さといい深さといい又周囲の工合といい、四、五丈の瀑には勿体ない程の素派らしい釜である。この釜あるが為に釜沢と呼ばれているのかも知れぬ。釜の周りを取巻いている峭壁は、鉋をかけたように滑かで、襞もなければ皺もない、全く一続きの岩である。北から落ち込んだ水は、上流から運び来った無数の巨岩塊を釜の南側に山と堆積して、一曲して西側を押し破って流れ出ている。其処を徒渉して黒木の繁った急傾斜を攀じ登り、瀑の西側を乗り越えて上流に下り込むより外に手段はないと思った。後に冠君の話を聞くと、普通猟師などの入り込む路は、反て東側に在って割合に楽だとの事であった。自分等は木こそ生えているがあの岩壁はとても通れぬと思っていた。所が冠君は自分等の通った方をとても通れぬと思われたそうである。結局両方とも通れることになったのである。尚お瀑壺の南側の木立の中には七、八人も泊れる大岩窟があって、如何なる天候にも安全なる避難所であるという。