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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Read 平の将門 (たいらのまさかど) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 232,193 characters · 463 screens
桔梗と、別れて、落ちるときに、
(さびしくても、しばらくの耐えだよ。初霜の降りるまでには、きっと、迎えに来るからな)
そういって慰めたあの最後のことばを――である。将門は、石井の営兵を数えた。部下は二千をこえている。以後、まったく積極的に鍛えてきた精鋭である。
「よし、備えはできた。妻子のとむらい合戦ぞ」
将門は、兵千八百人をつれて、筑波へ立った。なお六、七百の兵を、石井の営に残して、弟たちには、留守をたのんだ。
羽鳥の良兼は、これを知ると、
「そういう鉾先は、かわすに限る」
と、一族をつれ、逸早く、筑波をこえて、弓袋山へ逃げ籠ってしまった。
「ええ、存分に戦って、夏以来の思いをそそいでやろうとしたのに」
将門は、羽鳥へ来てみて、無念がった。あらゆる手段をつくして、良兼をおびき出そうとしたが、さきは老獪である。決して、こういう場合は、相手にならない。
ぜひなく、彼は、それが目的ではないが、豊田郷の館や自分の領民に与えられた通りな、狼藉、放火、掠奪を、良兼の領下に振舞って還って来た。まさに、歯を以て歯に酬いたのである。
こうして、その年は、暮れかけた。承平七年も、十一月にはいった。