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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Read 平の将門 (たいらのまさかど) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 232,193 characters · 463 screens
それが、惜しくも、三十九という若さで、病死してしまったため――時平の才幹は、まだ、政治のうえに実現はされなかったが――だれも、人物は、認めていた。
ところが、弟の忠平と来ては、比べるにも、おはなしにならない。
“宮中の狡児”
という評が、それを尽している。
優柔で姑息。わがままで、華奢放逸。優れているのは、管絃と画だけだ、とみないうのである。
画は、自慢で、かつて扇に、時鳥を画いたのを、長明親王にさしあげた。親王が、なにげなく、扇を開かれると、要が、キキと鳴ったので、
(あ。この時鳥が啼いた――)
と、戯れに仰っしゃった。それをまた、おベッかな公卿たちが、そばから、
(さすがは、お筆の妙、名画のしるし、時鳥は画いても、啼く声までを画きあらわした者は、古今、忠平の君おひとりであろう)
などと賞めたてた。
それを忠平は、自分で、自慢ばなしにしたり、歌の草稿などにも、自ら“時鳥の大臣”などと署名している。
また甥の敦忠は、管絃の名手なので、これをあいてに、和琴、笛などに憂き身をやつし、自らの着る物は、邸内に織女をおいて、意匠、染色、世間にないものを製して、これを、誇りとするような風だった。