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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Read 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,159 characters · 39 screens
雪の上には、ここでも、婆と娘の足跡のほか、押したような痕すらない。
信心深い娘で、毎月八日にきまって手拭を納めに来るので、婆とは顔馴染、素性もよく知っていた。谷中の延命院の近くに住んでいる八重という浪人者の一人娘。
坂下の番屋に気のきいた番衆がいて、駆け込んで来た婆の話をきくと、一緒に飛んで来て、石段の下へ縄を張って参詣の人を喰い止めてしまったので、足跡は、そっくりその時のままになっていた。
創も、初枝のときと寸分ちがわない。条件もそのまま。従って、わからないことも前に同じ。
駆けつけて来た与力、お手先。五里霧中のていでぼんやり引上げて行った。
一度ならともかく、こんなぐあいに引続いて二度までも謎のような事件が起ると、早耳の市中ではそろそろ評判を立てる。
尾に鰭がつき、若い娘ばかり十五人も生胆をぬかれたように言う。
若い娘を持った親達の心配。それよりも、当の娘たちの脅え方がひどい。ちょうど正月興行が蓋をあけたというのに逆上るほど見たい芝居もがまんして、家にちぢこまっている。
月番の南町奉行所でも躍気となって、隠密廻、常廻はもとよりのこと、目明し、下ッ引を駆りもよおし、髪結床、風呂屋、芝居小屋、人集り場、盛り場に抜目なく入り込ませ、目くじり聴き耳立てて目ぼしい聞込みでもとあせり廻るが、一向、なんの手懸りも