Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ひらがげんないとりものちょう

平賀源内捕物帳

久生 十蘭

Read 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,159 characters · 39 screens

Aozora Bunko

ない。雲を掴むよう。

てんやわんやのうち、空しく日が経って十六日。

よもやと思っていた係与力の耳へ、谷中瑞雲寺の閻魔堂のそばで、つい、たった今、また娘がひとり殺られたという急な報せ。ちょうど、閻魔の祭日の当日なので。

そばと言っても境内ではない。瑞雲寺の石塀をへだてた隣りの家。

娘の名はお蔦。さきの二人と同じく、やはり十八。

浜村屋という芝居茶屋の二女で、二人に劣らぬ縹緻よし。商売柄になじまぬ躾のいい娘で、この朝も早く起き、昨夜の雪が薄すらと残った物干台へ、父親の丹精の植木鉢を運びあげていた。

物干へ上ると、閻魔堂の屋根はすぐ眼の前。気さくなたちだから、植木鉢を棚へ並べながら境内を見下ろして、二階の座敷にいる母親に、大きな声で参詣の人の品さだめをしてきかせていた。

そのうちに、とつぜん声がしなくなり、コソとも動き廻る音が聞えなくなったので、母のお芳が妙に思って、横手の半蔀から物干の方を見上げて見ると、お蔦が、膝をつくようにして、雪の上にがっくりと上身をのめらせていた。

物干場から瑞雲寺の石塀までは、大体、五間ほど離れている。そちらへ迫ってゆく屋根もなく、物干の下はすぐ黒板塀を廻した中庭。