Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Read 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,233 characters · 223 screens
鱗粉
一
海浜都市、K――。
そこは、この邦に於ける最も華やかな、最も多彩な「夏」をもって知れている。
まこと、K――町に、あの爽やかな「夏」の象徴であるむくむくと盛り上った雲の峰が立つと、一度にワーンと蜂の巣をつついたような活気が街に溢れ、長い長い冬眠から覚めて、老も若きも、町民の面には、一様に、何となく「期待」が輝くのである。実際、この町の人々は、一ヶ年の商を、たった二ヶ月の「夏」に済ませてしまうのであった。
七月!
既に藤の花も散り、あのじめじめとした悒鬱な梅雨が明けはなたれ、藤豆のぶら下った棚の下を、逞ましげな熊ン蜂がねむたげな羽音に乗って飛び交う……。
爽かにも、甘い七月の風――。
とどろに響く、遠い潮鳴り、磯の香――。
「さあ、夏だ――」
老舗の日除は、埃を払い、ペンキの禿げた喫茶店はせっせとお化粧をする――若い青年たちは、又、近く来るであろう別荘のお嬢さんに、その厚い胸板を膨らますのである。
海岸には、思い立ったように、葭簀張りのサンマアハウスだの、遊戯場だの、脱衣場だのが、どんどん建てられ、横文字の看板がかけられ、そして、シャワーの音が奔る――。