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あしのうら
怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
蘭 郁二郎
Read 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,233 characters · 223 screens
蒼空の下、繰りひろげられた海岸の風景は、なんと華やかな極彩色な眺めであったろう。まるで百花撩乱のお花畑のような、ペンキ塗りの玩具箱をひっくり返したような、青春の夢のように美しくも目を奪うものであった。それは恰度ここ数日の間に、東北の僻村から銀座通りへ移されたような、驚ろくべき変化だった。
あの悄々と鳴り靡いていた、人っ子一人いない海岸の雑草も、今日はあたりの空気に酔うてか、愉しげに顫えている。無理もない、この海浜都市が、溌剌たる生気の坩堝の中に、放り込まれようという、今日がその心もうきたつ海岸開きの日なのだから――。
沖には、早打ちを仕掛けた打上げ船が、ゆたりゆたりと、光り輝く海面に漾い、早くも夏に貪婪な河童共の頭が、見えつ隠れつ、その船のあたりに泳ぎ寄っていた。それが、恰度青畳の上に撒かれた胡麻粒のように見えた。
鷺太郎は、雑草を分けると、近道をして海岸に下り立った。
砂は灼熱の太陽に炒られて、とても素足で踏むことも出来ぬ位。そして空気もその輻射でむーっと暑かった。そして又ワーンと罩った若い男女の張切った躍動する肢体が、視界一杯に飛込んで来て、ここしばらく忘れられたようなサナトリウムの生活を送っていた彼は、一瞬、その強烈な雰囲気に酔うたのか、くらくらっと目の眩暈むのを覚えたほどであった。