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あしのうら

怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像

蘭 郁二郎

Read 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像 (あしのうら) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,233 characters · 223 screens

Aozora Bunko

――それが、茲二三ヶ月、いくら手紙を出しても、いくら安否を問うても、まるで梨の礫であった。

私は、不安になって来た、いままでが、私の手紙に対して几帳面な黒住だっただけに、何かしら黒い翳を感ずるのである。(一体、どうしたのだろう……)

二

私は、五時を合図に退社ると、その足で東京駅にかけつけしばらく振りで省線電車にゆられ始めた。

そして、黒住の住む西荻窪の駅に、はき出された時は、もう空の茜が薄黝く褪せた頃だった。

燦々と輝く電燈を吊した新興商店街を抜けると、見覚えの道が、黒く柔らかに武蔵野の森に続いていた。私は黙々として記憶の道順を反芻しながら、いくつかの十字路を曲ると、むくむくと生え並んだ生垣の中に、ぼんやりと輪を描く外燈を発見した。

私は、も一度「黒住」とかかれた真ッ黒い表札を確めると玄関の格子戸を細目にあけ、案内を乞うてみた。

(はい……)

そんな返事が、台所の方できこえると、ばあやが、濡れた手を、前掛で拭き拭き出て来た。

『まァ、春樹さんじゃありませんか、まァまァすっかりお見外れいたしましたよ、ほんとにお久し振りで……』

ばあやは久し振りの訪問者を、嬉しそうに迎えてくれた。