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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,353 characters · 371 screens

Aozora Bunko

今の天下に、真に恃みがいある武将といえば、そも、誰を指すでしょうか。――聞説、貴方は若年より足跡諸国に遍く、また失礼ながら藤孝も、一かど御見識ある具眼の士と敬服している次第です。何分、かくいう私などは、身長く紛乱の京都にあって、時勢の中心にはおりながら、かえって魚に河が見えないように、新しい時流には晦い気がします。そもそも、この朝倉家などを、唯一のお味方と思って来ただけでも、その愚を悟りました。――どうでしょう、貴殿の御腹蔵のないお考えでは。また、そういう武将はないでしょうか」

「ありましょう」

「ありますか」

藤孝は、眼をかがやかした。

じっと、膝においていた手を、光秀はゆるめて、指で、畳へかいて見せた。

織田信長

「……岐阜城の?」

藤孝は息をのんだ。見つめていた畳の上から光秀の顔へ眸をあげて、ややしばし口をとじていたが、

「さすがは」

と、頷いて、それから二人は、織田信長という人について、かなり長い間、お互いの意見を交わした。

光秀は、自身、幼年から斎藤家に身をおいて、旧主道三山城守に扈従して、その聟君たる彼の人間も眼に観ているので、いうところには、根拠があった。