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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,353 characters · 371 screens
――何でそんな所に、小さくなって、おざるのか。はて、遠慮ぶかい」
手をあげて招きながら、
「こちらへ、こちらへ」
さも懐かしげに、彼は呼ぶ。
おえつは、いよいよ身を小さくして、俯向いているばかりだった。
鄙びた後家姿を、じっと竦めて、
年も、四十をこえた頃。
もう二十年も見なかった人なのである。藤吉郎にとっては、母の妹にあたる「おえつ」さんであった。
そのむかし、藤吉郎も日吉とよばれていた頃は、若い叔母のおえつさんは、美人であった。――その美しさは、窶れた中にも、どこかまだ仄かに残っている。
日吉が、光明寺の小僧にやられた時、この叔母は、すぐ下の藪山の加藤弾正と恋仲で、やがて、夫婦になったが、間もなく、その良人の弾正は、戦場で大怪我して、不具になってしまった。
日吉の父、弥右衛門と、ちょうど同じような運命だった。
おえつさんは、貞節だった。日吉は、貞節な叔母の美しい姿を、今でも覚えている。
――けれどあの頃は、日吉にとっては、決して温かい叔母さんではなかった。
村中で鼻つまみの腕白者が、寺小僧から追ん出されたり、茶わん屋から放逐されたり、評判のわるいこと甚だしかったので、若い叔母さんは、そんな腕白が、身内にいるということを、良人の弾正へ、ひどく肩身せまく思って、日吉が家へ顔を出すと、