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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,353 characters · 371 screens
父は、今度の騒動となりましてからも、常と変りなく、港の会所へ詰めては、町の公務を執り、また、家事の始末は、一切をわたくしどもへ申しつけ、さて、一同へ申しますには。――一般の町の衆とちがい、自分は日頃から堺の町政にあずかる者、こういう場合に、町の衆の信望を裏切っては申し訳ない。一身一家の安危は顧みていられない。町の運命を最後まで見届けねばならぬ。兵火のため、堺港が灰とならば、わが身も共に灰ともなれ、ひとりの町民でも踏み止まっているうちは立ち退かれぬ。――かように申しておりました」
「なるほど。宗易どのの御気性ではそうあろう。会所に見えても、そう御決心のほどをいわれておるので、わし達も、励まされて、踏み止まっているわけじゃが、きっと今夜は、茶事にことよせて、何ぞ大事な御相談があるものじゃろうと思って来たわけじゃが」
「こんな際とて、お招きしても、何もおもてなしはないが、せめて良い花でも一枝……と、庭面をながめていたそうでございますが、心に適う花もなかったか、裏木戸からふいと出て行ったままだったとか、後で聞きました」
「お体に怪我でもなければよいが、気の立っている武者たちに連れられて、御本陣まで曳かれて行ったとすれば、何しても、由々しい御心配。