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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens
云いかける横合いから、
「何だと。無礼者ッ」
家中のひとりが、拳を固めて、いきなり日吉の頬骨を撲りつけた。
「アふ!」
と、顎を外したように、日吉は両手で口を抑えた。
「いわしておけば、聞き捨てならぬ雑言を申す。小伯先生、お退きください。癖になる。ただ置いては」
激昂したのは、ひとり今、日吉を撲った者だけに止まらない。今の日吉の一言を耳にした者のほとんどが、
「われわれを、侮辱したものだ」
「御家憲を誹るも同じだ」
「免せぬ奴」
「いっそ、斬り捨ててしまえ。――殿も、よもや吾々の仕方を、無理とはなさるまい」
ほんとに、裏の藪へ連れて行って、首にしてしまいそうな人々の怒気だった。
小伯も、止めるのに困った。が、極力一同を宥め、辛くもその場だけは、日吉の首をつなぎとめた。
その日。黄昏――
能八郎が、そっと小者部屋をのぞいて、壁の隅に、悄ンぼり坐って、歯の痛むような顔をしている日吉を、
「おい。おい」
小声で、外から手招きした。
「へ、何ですか」
日吉の顔は、おかしい程、腫れ上がっていた。昼間、撲られた痕が熱を持って、ひね生姜の根みたいに腫れ出したのである。
「ひどく痛むか」