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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens

Aozora Bunko

尾張八郡の将来を、その烱眼で見こしていた上の承諾であることはいうまでもない。

程なく、信秀は四十二を一期に世を去った。

信長のうつけ振り、粗暴、狂態は募るばかりだとある。それも思うつぼだった。

――そして、

今年天文二十二年の四月。

上総介信長はちょうど二十歳。

「いちど、聟どのの顔みたい。――双方より出向いて、富田の国境で、聟舅の初対面遂げたいが」

道三秀龍が云い出した。

「承知」

と、信長の即答。

富田ノ庄は、美濃尾張のあいだにある一向僧の坊主領であった。戸数七百ほどの村落で、正徳寺という寺院がある。会見はそこでときまり、四月の下旬、上総介信長は曠れの人数を率いて、那古屋の城を出、やがて木曾川、飛騨川の渡舟も打ち越えて、青葉若葉につつまれた富田ノ庄へ押しすすんで行った。

弓、鉄砲の者、約五百。三間柄の長い朱槍約四百、徒士の郎党、足軽組の者、およそ、三百人あまりと数えられた。

粛々と流れて来る――

その中に、一団の騎馬隊は、騎馬の信長を囲んで前後に備え立て、いざといえば、そのまま戦隊になるような配備だった。

麦の穂は青い。もう夏めいた四月である。今、越えて来た飛騨川から、爽やかな風が、その長い行列の上を燦々と渡ってゆく。