Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens
土間、炉部屋の近臣たちが、
「大殿、尾張衆が、はや見えた由にござります」
早口に告げると、
「うむ」
道三は、頷いたまま、さらに竹窓の端へ身を寄せて、じっと、眼をすえていた。
表の土間戸は、逸早く閉めきって、家臣たちは、わずかな隙間、板戸のふし穴などへ、顔をつけていた。
皆……しいんと黙る。
並木の小鳥の声。
その小鳥の群れも、ぱっと羽音をのこして、飛び去ると、もう微風の音もしなかった。水を打ったように、街道はひそまり返る。
――と、程なく。
よく揃った兵隊の足なみが徐々に近づいて来た。磨きぬいた鉄砲の列、小隊四十名ぐらいずつ、十段に分列して、林のように流れて行く朱柄の槍組などが、眼の前をゆく。
道三は、息もせずに、その武器や、兵隊の足つきや、隊伍の組み方を、見入っていた。
だが、やがて続いて、その粛然とした足なみの次に、馬蹄の音だの、大きな話声が乱れて来たので、
「さては」
と乗り出すように、道三は眼も放たずにいた。
見ると、騎馬隊の中に、一際優れた馬格の駒がさしかかった。見事な螺鈿鞍に、華やかな口輪を噛ませ、紫に白を綯い合わせた手綱を掻把り、聟殿信長は、何か嬉々と、うしろの家臣を振り向いて、話しかけながら見えたのであった。