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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens

Aozora Bunko

どやどやと、側衆に囲まれて、そこの裏口から出ると、抜け道を急いで走り、行列の先頭が、正徳寺の門前で停った頃、彼は寺の裏門から奥へ駈けこんで、取り澄していた。

「――お出迎え」

「お出迎えを」

側衆たちも、あわただしく、衣裳を着かえ、廻廊や間ごと間ごとを、云い触れる声に応えて、大玄関へ出て行った。

尾張衆の多人数が着いた。

寺門は、人に満ちた。

お出迎えに――と美濃衆はみな立ち払ったので、本堂、大書院、客殿は風の通るだけで、人影もなかった。

「大殿には」

斎藤家の老臣、春日丹後は、まだ起たぬ道三に向って、そっと意向を訊いた。

道三は、首を振って、

「起つに及ばぬ」

と、いった。

客は聟、自身は舅。それでいいとすればよかろうが、きょうは初対面の儀式である。

聟の信長も、一国の主。故に、対等の礼を執って、美濃と尾張の国境にあるこの本願寺領の中立地帯まで、双方から出向いて来たのであるから、舅とはいえ、出迎えの礼は執らねばならないのではないか。

そう丹後は考えたので、一応きいてみたのであるが、

――それには及ばん。

と、道三がいうので、

「はッ。……では、てまえだけでも」