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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens

Aozora Bunko

「守護家を奉じて」

と、彼は将士を鼓舞した。

名のない戦はしない。まして宗家を攻めるには、義と名分の旗じるしが要る。――が彼は、その機会に荊棘の一方を、やっと切り拓いたのであった。

那古屋城へは、叔父の信光を、自分の跡に入れておいた。

が、何者にか、信光は暗殺されてしまった。

「佐渡、そちが行け。那古屋はそちならでは、信長に代って、留守する者はない」

林佐渡守へ、命が下った。

「身命をもって」

と、おうけして、佐渡は那古屋へ赴いて、城代の任に就いた。

心ある家臣は嘆いた。

「ああ、やはり暗君はやはり暗君でいらせられる。――時折は、ぎょっとするような御英気の閃きをお見せあるかと思えば――あの林佐渡守などを、お信じあるようでは……」

事実、佐渡の行動には、怪しいふしが多かった。

信長の父が生きていた頃は、彼も無二の忠臣といわれたもので、そのため、先代信秀から、平手中務と共に、遺子をたのむぞ、と死後を託された一人だったが、その信長の放縦と、つかまえ所のない天性に、見限をつけてしまったものとみえ、専ら、信長の弟信行と、その母堂のいる末盛城へ近づいて、折もあらば、信長を廃嫡し、信行を主君の座に立てようと意図している男だった。