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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Read 新書太閤記 (しんしょたいこうき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 180,256 characters · 361 screens
その代り、日吉も、家にいれば、朝から夜まで、手伝いをさせられた。
ちっとでも、怠けていたり、悪戯でもしていようものなら、筑阿弥の大きな手は、すぐ日吉の顔を撲いた。日吉は、嫌でたまらなかった。仕事よりも、義父の眼から少しの間でも遁れていたかった。
毎日、筑阿弥はきっと午睡をした。日吉は得たりとばかり、その隙間に抜け出すのである。やがて筑阿弥が、畑や堤に姿を現わして、
「猿ウっ。うちの猿めは、何処へ行ったかあ」
と、探しに来ると、日吉は、何ものも捨てて、とうもろこしの中へ滑り込んでしまった。
探しあぐねて、筑阿弥がのこのこ帰って行くと、日吉は躍り出して、
「わあい」
と凱歌をあげ、晩に帰れば、夕飯も与えられず、仕置にあうことも、その時は頭にもなく、また、遊び狂うのだったが――今日はそういうわけには行かなかった。
「野郎」
筑阿弥は、とうもろこしの中を、彼方此方、恐い目をして歩いて来た。
「こいつはいけねえ」
と、考えたので、堤をこえて、河原地の方へかくれた。
すると、一人ぼっち、於福が堤に立っていた。夏でも於福だけは、ちゃんと着物を着て、水にも泳がず、赤蛙も喰べなかった。