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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
Read 日本橋 (にほんばし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,697 characters · 177 screens
……半鐘の響、太鼓の音、ぱっぱっと燃ゆる音、べらべらと煙の響、もの音ばかり凄じく、両側の家はただ、黒い墓のごとく、寂しいまでにひそまり返って、ただ処々、廂に真赤な影は、そこへ火を呼ぶか、と凄いのである。
洪と鳴って新しい火の手が上ると、魔が知らすような激しい人声。わッと喚いてこの町も危くなったが、片側の二階からドシドシ投出す、衣類、調度。
ト諸君はお竹蔵と云うのを御存じの筈と思う。あの屋根から、誰が投げて、どのがらくたに交ったか、二尺ばかりの蝋鞘が一口。蛇のごとく空に躍って、ちょうどそこへ来た、赤熊の額を尾でたたいて、ハタと落ちた。
発奮で打ったか。前刻滝の家の二階で受けた怪我の、気の勢で留まっていたか。この時、額から垂々と血が流れたが、それには構わないで、ほとんど本能的に、胸へ抱いた年弱の三歳の子を両手で抱えた。
が、慌しく刀を拾うと、何を思う隙も無さそうに、ギラリと冷かに抜いて、鞘を棄てて提げたのである。
そのまま襲入った、向うの露地口には、八九人人立したが、真中をずッと通るのに、誰も咎めたものが無い。
柳に片手を、柄下りに、抜刀を刃尖上りに背に隠して、腰をずいと伸して、木戸口から格子を透かすと、ちょうど梯子段を錦絵の抜出したように下りて、今、長火鉢の処に背後向きに、すっと立った、段染の麻の葉鹿の子