Japanese reading practice

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Read 明暗 (めいあん) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 322,590 characters · 645 screens

Aozora Bunko

二十三

二十三

「真事、そりゃ好い靴だよ、お前」

「だってこんな色の靴誰も穿いていないんだもの」

「色はどうでもね、お父さんが自分で染めてくれた靴なんか滅多に穿けやしないよ。ありがたいと思って大事にして穿かなくっちゃいけない」

「だってみんなが尨犬の皮だ尨犬の皮だって揶揄うんだもの」

藤井の叔父と尨犬の皮、この二つの言葉をつなげると、結果はまた新らしいおかしみになった。しかしそのおかしみは微かな哀傷を誘って、津田の胸を通り過ぎた。

「尨犬じゃないよ、小父さんが受け合ってやる。大丈夫尨犬じゃない立派な……」

津田は立派な何といっていいかちょっと行きつまった。そこを好い加減にしておく真事ではなかった。

「立派な何さ」

「立派な――靴さ」

津田はもし懐中が許すならば、真事のために、望み通りキッドの編上を買ってやりたい気がした。それが叔父に対する恩返しの一端になるようにも思われた。彼は胸算で自分の懐にある紙入の中を勘定して見た。しかし今の彼にそれだけの都合をつける余裕はほとんどなかった。もし京都から為替が届くならばとも考えたが、まだ届くか届かないか分らない前に、苦しい思いをして、それだけの実意を見せるにも及ぶまいという世間心も起った。