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めいあん
明暗
Read 明暗 (めいあん) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 322,590 characters · 645 screens
三十四
「今飲んだばかりって、あれっぱかり飲んだんじゃ飲んだ部へ入らないからね」
「でも君はもう充分ですって断っていたじゃないか」
「先生や奥さんの前じゃ遠慮があって酔えないから、仕方なしにああ云ったんだね。まるっきり飲まないんならともかくも、あのくらい飲ませられるのはかえって毒だよ。後から適当の程度まで酔っておいて止めないと身体に障るからね」
自分に都合の好い理窟を勝手に拵らえて、何でも津田を引張ろうとする小林は、彼にとって少し迷惑な伴侶であった。彼は冷かし半分に訊いた。
「君が奢るのか」
「うん奢っても好い」
「そうしてどこへ行くつもりなんだ」
「どこでも構わない。おでん屋でもいいじゃないか」
二人は黙って坂の下まで降りた。
三十四
順路からいうと、津田はそこを右へ折れ、小林は真直に行かなければならなかった。しかし体よく分れようとして帽子へ手をかけた津田の顔を、小林は覗き込むように見て云った。
「僕もそっちへ行くよ」
彼らの行く方角には飲み食いに都合のいい町が二三町続いていた。その中程にある酒場めいた店の硝子戸が、暖かそうに内側から照らされているのを見つけた時、小林はすぐ立ちどまった。