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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
Read 明治劇談 ランプの下にて (めいじげきだん ランプのもとにて) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,283 characters · 329 screens
は満場の観客と共に、ただ酔ったような心持になっていた、と言うに過ぎない。どうかんがえても、それ以上には説明の仕様がない。
その成功に味を占めたのかも知れない。その翌二十九年の五月には、歌舞伎座で更に「助六」を上演した。このときの一番目は「富貴草平家物語」、二番目は「箱書附魚屋茶碗」で、「助六」はやはり中幕に据えられていた。一番目は黙阿弥作の「重盛諫言」を土台として、三代目新七が新たに鹿ヶ谷の別荘や日吉の神輿振りなどを書き加えたもので、団十郎の重盛や西光法師はすでに定評あるものであったが、八百蔵の清盛入道は書きおろしの左団次を凌ぐという大好評で、今や彼が売り出しの頂上であった。
これに反して、新蔵はいよいよ不運の人となった。去年の「暫」の当時には、なまず坊主で活躍し更に木村重成とお谷とで、その伎倆を発揮していたのであるが、その後かれの病いはいよいよ重くなったので、今度の興行には思わしい役も付かなかった。一番目で宗盛と俊寛、中幕で福山のかつぎというような比較的軽い役々をつとめるはずで、番附面にもそれだけの役名をつらねていたが、実際は染五郎が代って宗盛をつとめ、舛蔵が代って俊寛をつとめ、本人は福山のかつぎ一役で舞台に顔をみせるだけに過ぎなかった。