Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Read 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 158,540 characters · 319 screens
ふたりは欅と桜の間をくぐって本堂の前に立った。
「親分、なかなか御参詣があるねえ」
「花どきだ。おれたちのような浮気参りもあるんだろう。折角来たもんだ。よく拝んでいけ」
松吉もまじめになって拝んだ。名代の藪蕎麦や向畊亭はもう跡方もなくなったので、二人は茗荷屋へ午飯を食いにはいった。松吉は酒をのむので、半七も一、二杯附き合った。二人はうす紅い顔をして茶屋を出ると、門口で小粋なふうをした二十三四の女に出逢った。女は妹らしい十四五の小娘をつれて、桐屋の飴の袋をさげていた。小娘は笹の枝につけた住吉踊りの麦藁人形をかついでいた。
「あら、三河町の親分さん」と、女は立ち停まって愛想のいい笑顔をみせた。
「御信心だね」と、半七も笑って会釈すると、小娘も笑って挨拶した。
「お前たちもお午飯かえ。もう少し早いとお酌でもして貰うものを、惜しいことをしたっけな」と、半七はまた笑った。
「ほんとうに残念でございますね」と、女も笑った。「妹と二人で家をあけちゃあ困るんですけれど、きょうはよんどころない御代参を頼まれたもんですからね。一人で二つ願っちゃあ、あんまり慾張っているようで勿体のうござんすから、自分は自分、妹は御代参と、こう役割を決めてまいりました」