Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

あらしのなか

暴風雨の中

山本 周五郎

Read 暴風雨の中 (あらしのなか) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,339 characters · 30 screens

Aozora Bunko

四

売りに寄って、ふらふらとそいつに手が出たんだ」

そのとき一家は飢えていた。母子五人(およねも子守り先から帰っていた、)が四五日なにも喰べない状態だった。特にこれという理由はない、飢えるのは常のことだった。条件のごく些細な変化にも、一家はすぐに食えなくなるし、食えないことには馴れていた。けれどもそのときはひどかった、啜る粥さえも無かったのである。……質屋の下女がそれを見ていた、おいちが握り飯を五つ、竹の皮に包むのを見ていて、やはり佃島から小魚を売りにゆく漁師に、それを話した。

――おいちさんは泥棒をした。

狭い島のなかで、噂はすぐに弘まった。子供たちは泥棒の子と呼ばれた。

四

「その握り飯が手伝いに来た人間に出されたものだとすれば」と男が云った、「おめえのおふくろのしたことは泥棒だ、たとえ一家が飢えていたにしろ、おめえのおふくろはそいつに手を出しちゃあいけなかったんだ」

「おめえ一家で飢えたことがあるのか、親分」

「おらあまっとうな人間だ」佐平という男はいきり立った、「まっとうな人間は一家を飢えさせるようなまねはしねえ、一家を飢えさせるようなやつは人間の屑だ」