Japanese reading practice

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,285 characters · 330 screens

Aozora Bunko

「犬猫には効いたが、人間には無効だというのか」

――さような筈はございません。

「隼人、毒見のしだいを述べろ」

――申上げます。第一に与頭、第二に膳番、第三に小姓頭、以上三人が、若ぎみにたてまつる膳部と同一の物を、べつの器物にとり分け、各自の控え所にてこころみます。それが終りますと、刀番が、膳部を捧げました両手で、べつに器物と箸を持ち、御前にすすみますと、食器ごとに、その蓋の上に中の料理の一部ずつがのせてございますのを、べつに持参した箸でおのれの器物に取り、その場で鬼(毒見)を致します。

「当日は誰と誰がした」

――与頭は米山兵左衛門、膳番は熊田市兵衛、小姓頭は千田平蔵、刀番は塩沢丹三郎でございました。

「塩沢丹三郎とは」

――もと船岡どのの家従でございました。

「よし、聞いたとおりだ道円、当日は四人が毒見をし、四人とも今日まで無事にいる、そのほう薬の効果に間違いなしと云うが、それではこれをどう解釈したらいいのだ」

――私にも合点がまいりません。

「膳部係りの手落ちか」

――膳部係りは指図どおりに致したと申します。

「証拠があるか」

――両名が立会いのうえ致しましたそうで、分量も指図どおり、両名が念に念をいれてやったと申しますし、それに偽わりはないと存じます。