Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,285 characters · 330 screens

Aozora Bunko

風流無韻

」

「そう思うか」

「相違ないと思います」と甲斐が云った、「ここで正式に訴訟すれば、おそらく、一ノ関は公儀へもちこむことでしょう、かれらは、家中に騒動を起こそうとして、つねに機会を覘い、また、つねにいろいろ策謀しております、郡境の争いとなると、とりあげようによっては公儀の問題になりますから、必ず老中へもちこむに違いありません、そうなると、酒井、一ノ関の、おもう壺にはまると思うのですが」

安芸は口をむすんで沈黙した。甲斐も長いこと黙っていて、安芸の顔におちついた色があらわれるのを認めると、静かに、扇子で膝をはらいながら云った。

「では私は、検分の立会いにまいります」

風流無韻

新八はうっかり歩いていた。

頭の中では、三味線の新らしい手を、つけてみたり消してみたりしながら。――彼は浅草三軒町から、湯島へ帰る途中だったが、ついうっかりしていて、人に呼びとめられ、気がついてみると、上野の広小路へ来ていた。

「新さんじゃないの、どうしたっていうの」

呼びとめたのはおみやであった。

姿は御殿ふうだが、新八を見るまなざしや、その言葉つきは、三年まえに別れたときと違って、それ以前の、嬌めかしく色めいたようすに返っていた。