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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,285 characters · 330 screens
断章(十二)
こうして、三人毒死の事は、辛くも隠蔽された。
断章(十二)
――御評定はいかがでございました。
「酒の支度をさせろ、疲れた」
――お数寄屋に支度を致させました。
「女どもはさがれ」
――なにか御機嫌を損じましたでしょうか。
「原田の心底がわからぬ」
――はあ。
「矢崎舎人は家禄召し上げ、領内追放ということに定った、にも拘らず原田は顔色も変えなかった」
――反対する筈だという御意でしたが。
「しない筈がない、原田は必ず反対し、抗議を出す筈だった」
――罪は密通ということでございました。
「もちろん拵えたのだ」
――はあ。
「彼は上田帯刀の妻子を岩ヶ崎へ送るところだった」
――物頭上田帯刀は、お咎めの筋があって家禄没収、その身は片倉さまにお預け、妻子は古内(源太郎)どのに預けとなり、矢崎舎人が命ぜられて、帯刀の妻子を送ってまいった、ということまでは承知しております。
「古内の館、栗原郡岩ヶ崎まで送ったのだ」
――事はその途中でございますな。
「宿で舎人が、上田の妻にみだらなことをしかけた、それを見たという者が訴え出たのだが、事実は違う、事実は上田の妻が旅疲れで、失心して倒れ、付いていた舎人が助け起こしたのだ」