Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,285 characters · 330 screens

Aozora Bunko

「おれは湯島へ帰らなければならないぜ」

「酔ってからのはなしよ」

茶屋の女が、銚子と肴の皿を持ってはいって来、おみやはあとの酒を命じた。女が去ると、おみやは手酌で続けさまに呷り、新八は悲しげにそのようすを眺めた。

「酒なんかでごまかすより、思いっきり泣くほうが気が晴れるぜ」

「あたしが泣くんですって」

「おまえは黒田という男が好きだった、いまでも好きなんだ、隠してもおれにはわかる、おまえにはあの男を忘れることはできやしないよ」

おみやは笑った。

「ばかね、新さん」とおみやは云った、「そんなところはまだ子供よ、あたし黒田さんが好きだったわ、慥かに好きだったけれど、あの証書のことを云われたとたんに嫌いになっちゃったの、おととしの冬、ちょうどこの茶屋でのことよ」おみやはまた飲んだ、「あたしは盗んであげるって約束をし、あの人を先に帰らせてから、独りでお酒を飲んだの、ちょうど宿下りで、お屋敷のほうは三日お暇が出ていたから、つぶれても心配はなかったのよ、あたし酔って、独りでさんざあの人をこきおろしたわ、自分のことはもちろんよ、自分のばかさかげんもやっつけたし、あの人の身勝手な、男らしくもないやりかたを、思う存分こきおろしてやったわ」