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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,285 characters · 330 screens
「ふむ、十五年以前か」
――記録には、当時の勘定奉行、両名の見届けの判が押してあると申します。
「両人とはなに者だ」
――小染川市左衛門、只木下野とございます。
「うん、よし、考えておこう」
――どうあそばしますか。
「まず考えてみよう」
――すぐに人を遣わすがよいと存じますが。
「隼人はそう思うか」
――小染川、只木の両名を糾問すべきでございます、早く致しませぬと、かれらが気づいて、糊塗の手段をとるおそれがございましょう。
「うん、では誰か遣わそう、誰がよいか」
――今村善太夫と存じますが。
「役目はなんだ」
――目付役でございます、七兵衛と共にさきごろ目付役にあげられました。
「隼人がよければよかろう」
――善太夫は使えます。
「では彼にしよう、次はなんだ」
――増し御合力(勝手もと不如意の理由で、一門一家はじめ全家中に対して献上金を申付ける件)について、涌谷から御異議がまいりました。
「来ると思っていた」
――あらましを申上げます。
「要点だけ聞こう」
――先年の御合力は、小石川堀普請という、公用のためでやむを得なかったが、このたびは公儀から課役があったわけではないし、他に不当の加増なども多いようだから、また家中に不満の声があがると思う、もし必要なら、自分の知行二万二千石をぜんぶ献納してもよい、自分の妻子や家来どもは