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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 167,285 characters · 330 screens
と云った。止めるな、今日は懲らしてやるだけだ、宮本はどいていろと云い、又五郎はなお、相手は酔っている、勝負のできないほど酔っているんだ、今日はいけない、よしてくれと云った。
新八はとびあがって、脇のほうへとびのき、六郎兵衛は「さしで口をきくな」と又五郎に云って、木剣を高青眼につけた。こんどは残りの腕をもらった、その腕をもらったぞ、石川。よかろう、やってみろ、と石川が木剣をあげ、面上で眉庇のように、横に構えながら「いざ」と云った。
廊下の口へ、島田市蔵が来、尾田内記、砂山忠之進が来た。野中又五郎は走っていって、自分の木剣を取り、万一のときには二人を分けるつもりだろう、両者のほぼ中間に、少しさがってようすをうかがった。
六郎兵衛はすぐ踏込もうとするようすだったが、とつぜん眼をしかめて首を振り、改めて石川を見た。石川兵庫介の、眉庇にとった木剣が、腑におちなかったらしい。六郎兵衛は戸惑ったような眼つきをし、高青眼の木剣を上段へすりあげた。
石川の、面上に横たえた木剣が籠手さがりになり、すっと腰がおちた。木剣が斜めになると同時に、すっと、軽く、腰がおち「えっ」