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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Read 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 148,519 characters · 296 screens

Aozora Bunko

「伊達家に内紛があるということは聞いていたし、みやの話しであらまし察しがついたのだが、そこもとの考えはどうだ」

「私も、私も、そう思います」

「話してくれ」と六郎兵衛が云った、「なにかはっきりした根拠があるのか」

「初めからそうだったんです」と新八は云った、「渡辺さんや兄たちは、一ノ関さまに云い含められて、殿さまを新吉原へお伴れ申し、世間の噂になるようにしたんです」

「兄上が云ったのか」

「兄がいいました」

「理由はなんだ」と六郎兵衛が訊いた。

「御家の系譜を正しくするためだと聞きました」

「系譜を正すって」

「そうです」と新八は強く頷いた。

逼塞になった綱宗は、亡き忠宗の六男であった。長男の虎千代は七歳で夭折、二男の光宗は十九歳で死んだ。長男と二男と、そして立花(左近将監)忠茂に嫁したなべ姫の三人が正夫人ふり姫から生れた。ふり姫は池田輝政の女で、徳川秀忠の養女として忠宗に嫁したのであった。

このほかに、三男亀千代、四男(夭折)五郎吉、五男辰之助、六男巳之助丸(綱宗)という子たちがおり、これはみな側室から生れた。正保二年、光宗が十九歳で死んだとき、正夫人ふり姫は、いちばん末子の巳之助丸(綱宗)を世継にするよう主張した。