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いきふどう
橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇
橘 外男
Read 橘外男ワンダーランド 怪談・怪奇篇 (いきふどう) by 橘 外男 (たちばなそとお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 198,400 characters · 387 screens
ことごとく、竹の皮包みの喰べ物ばかり! お煮染……酢の物……赤飯……醤油瓶……酒の一合瓶……沢庵包み……
何故兄が、あんな忌わしい蔭口なぞを、叩かれていたのか? そんな蔭口を叩かれながら、黙々として隠従していたのか? そして兄弟の幸福ばかり図って、自分では村の生活にも財産にも、なんの未練も感じなくなっていたのか? ということなぞも、スッカリ飲み込めました。
いいや、それらが飲み込めたばかりではありません。何が故に村の医者に見せず、遠くの医者を呼んでいたのか? 村の菩提寺でなく、こんな遠くの寺へ、葬ったといっていたかというわけも、この瞬間ことごとくうなりを発して、私の心中で溶けて流れて消え去りました。みんな、私や弟に幸福な生活を送らせたい、兄の一心だったのです。
そして自分は、一言の愚痴をいうでもなければ、泣き言を並べるでもなく、黙々として母に、孝養の限りを尽している……これが私の兄の、真の姿だったのです。それが今、一瞬の間に音たてて、私の心で溶け去りました。あの子供の教育に熱心な人一倍家庭の教えの厳格な母が、今はまるで子供のように頑是なくなって、その膿み爛れて腐臭を発する身体に寄り添うて、子供にでも喰べさせるように、箸で口へ入れている兄の姿!